~パルワールドっていう不謹慎の塊~

私はモンスターを育成するゲームが好きです。
ポケモンが出た時の小学生で、デジモンも育てたし、たまごっち(モンスターなのかわからないですが)もドはまりしました。

中でも図鑑説明は大好き。
ポケモンは当時は割とシニカルなゲームの側面を出していたと思います。
実際の動物はいない世界です。ポケモンと人が共生している世界のはず・・・。
ライチュウ(電気タイプ)の図鑑説明には
「でんげきは 10まんボルトに たっすることもあり ヘタにさわると インドぞうでも きぜつする。」
ゴース(ゴーストタイプ)
「うすい ガスじょうの せいめいたい。ガスに つつまれると インドぞうも 2びょうで たおれる。」

インド象を引き合いに出すんだ・・・

リケジョ(理系女子)からすると、図鑑で説明するってことは実験したわけです。オーキド博士でしょうか。
とんでもねえ実験です。こんな図鑑説明は今はもうありません。
しっかりした世界観もできていますし、小さい子にこんな残酷な文章を読ませない時代になったんですから。

閑話休題

1年前に、あるゲームが大問題になりました。

パルワールド…ポケモンみたいに見えますが、中身はいろんなゲームのいいとこどりで実際にプレイしてみると全然違ってました。
自分のアバターは銃を持っていますし、捕獲したモンスターに仕事をさせてご飯も作る必要があります。
モンスター自体も働かせ続けるとうつ病になるし、骨折することもあります。システム的にはブラック企業を作ることもできるし、福利厚生や休息をしっかりさせてホワイトにもできる。
なかなかシュールなゲームです。
さて、上記の図鑑が好きという記述の前振りを回収しますがこのゲームにもモンスターの図鑑があります。


お気に入りはンダコアラ
「目つきが悪く友達は少ないが、心は優しい。群れからはぐれたタマモにエサを分け与える姿が目撃されている。」
いいやつです。
ただスキルがくるっています。

カフェイン接種
発動すると、ンダコアラがエナジードリンクを大量摂取し一定時間ンダコアラの移動速度が激増する。

実際につかうと仕事が早くなるわけでもなく、瞬間的に爆速で走ります。それだけ。ただ、この子。夜も眠らずにコツコツと仕事をします。眠ってくれない。


英語名は Depresso
由来: Depression(うつ病)+ Espresso(エスプレッソ) 
おいおいおい、優しすぎてエスプレッソでカフェイン入れながら夜なべして仕事をして、鬱になっているのか。
大丈夫か?目つきが大丈夫じゃない。

ここは医師としてカフェインの影響をまとめなければならない。


カフェインと片頭痛:エビデンスに基づく3つの視点

カフェインには「急性期治療の補助」「発作のトリガー・慢性化のリスク」「離脱頭痛」という3つの側面があります。

1. 急性期治療における「増強効果」(Positive)

カフェインはアデノシン受容体拮抗作用による血管収縮や、鎮痛薬の吸収促進・作用増強に働きます。

  • エビデンス: コクランレビュー(Cochrane Database Syst Rev. 2014)によると、片頭痛の急性期治療において、鎮痛薬(アセトアミノフェンやイブプロフェンなど)にカフェイン(100mg以上)を併用した場合、鎮痛薬単独よりも痛みの消失効果が有意に高いとされています。Derry CJ, et al. “Caffeine as an analgesic adjuvant for acute pain in adults.” Cochrane Database Syst Rev. 2014.
  • 臨床的なポイント: 市販の鎮痛薬や一部の処方薬(SG配合顆粒など)にカフェインが含まれているのはこのためですね。急性期には頼もしい味方です。

2. トリガーおよび慢性化のリスク(Negative)

一方で、常用は片頭痛の慢性化(Chronification)や薬剤の使用過多による頭痛(MOH)のリスクを高めることが示唆されています。

  • エビデンス:
    • 慢性化リスク: 米国の研究(Scher et al. 2004)では、カフェインの摂取と慢性連日性頭痛の関連が調査されました。それによると、カフェイン摂取量が多い場合、特に**「適度な摂取(中等量)」であっても、片頭痛持ちの患者さんでは慢性化のリスクが高まる可能性**が示されています。
    • トリガーとしての側面: 最近のレビュー(Nowaczewska et al. 2020)では、カフェインが片頭痛のトリガーになるかどうかは個人差が大きいものの、「過剰摂取」は明確にリスクであると結論づけています。
    Scher AI, et al. “Caffeine as a risk factor for chronic daily headache: a population-based study.” Neurology. 2004. Nowaczewska M, et al. “The Ambiguous Role of Caffeine in Migraine Triggering: To Withdraw or Not to Withdraw?” Nutrients. 2020.

3. カフェイン離脱頭痛(Withdrawal)

エビデンス: 国際頭痛分類第3版(ICHD-3)においても、**「カフェイン離脱頭痛(8.3.1)」**が定義されています。通常、カフェイン摂取を中断して24時間以内(多くは12〜24時間)に発現し、再摂取により1時間以内に軽快するとされています。Headache Classification Committee of the International Headache Society (IHS) The International Classification of Headache Disorders, 3rd edition.

頭痛持ちさんは、適量のカフェインならOK。過度の摂取はリスクでござい。

一方うつ病ではどうだろう

カフェインとうつ病:エビデンスに基づく3つの視点

1. うつ病発症リスクの低減(Protective)

多くの疫学研究やメタアナリシスで、コーヒー・カフェイン摂取とうつ病リスクの**逆相関(リスク低下)**が示されています。

  • エビデンス:
    • メタアナリシス(Wang et al., 2016など): コーヒー摂取量が1日1杯増えるごとに、うつ病のリスクが約8%低下するという用量反応関係が示されています。
    • Jカーブ効果: 1日400ml(約4杯)程度まではリスク低下効果が高まり、それ以上では効果が頭打ちになる、あるいはわずかにリスクが上がる可能性を示唆する「J字型」の関連を指摘する研究もあります(Grosso et al., 2016)。
    • 物質の特定: デカフェ(カフェインレス)ではこの効果が弱いか見られないとする研究が多く、カフェインそのもの(およびコーヒーに含まれるクロロゲン酸などの抗酸化物質との相乗効果)が関与している可能性が高いです。
    Wang L, et al. “Coffee and caffeine consumption and depression: A meta-analysis of observational studies.” Aust N Z J Psychiatry. 2016. Grosso G, et al. “Coffee, tea, caffeine and risk of depression: A systematic review and dose-response meta-analysis of observational studies.” Mol Nutr Food Res. 2016.

2. メカニズムの仮説(Biological Plausibility)

なぜ効くのかについては、主に以下の機序が想定されています。

  • アデノシン受容体拮抗作用: A1/A2A受容体をブロックすることで、間接的にドーパミンやグルタミン酸の伝達を増強し、気分の改善や意欲向上に寄与すると考えられています。
  • 抗炎症・抗酸化作用: うつ病の病態生理として注目される「神経炎症」に対し、コーヒーに含まれるポリフェノール等が保護的に働く可能性があります。

3. 不安・睡眠障害の悪化リスク(Risk / Comorbidity)

ここが臨床上の落とし穴です。うつ病患者さんは不安障害や不眠を併存していることが多いですが、カフェインはこれらを悪化させます。うつ病の回復期において、カフェインによる不眠が概日リズムの正常化を妨げ、寛解を遅らせるリスクがあります。

エビデンスと臨床:

高用量(特に400mg/日以上)では、不安、焦燥感、不眠を誘発することが明確です(DSM-5でも「カフェイン中毒/離脱」が記載されています)。パニック障害の既往がある場合、少量のカフェインでも発作を誘発する可能性があります(ogenic effect)。

意外や意外。
適度なコーヒーブレイクはうつの予防になるんだそうな。
ただ不眠になるほどのカフェインはやはり害。
ンダコアラも頭痛あるんじゃない?


薬もカフェインも、仕事も、なにごともほどほどがいい。
読者の皆様も年末で忙しいでしょうが、ほどほどに休みましょう。

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