こんにちは。医師の瞳です。
「飲み薬を何種類も試したけれど、結局頭痛が良くならない」 「薬を飲むタイミングばかり気にして、疲れてしまった」
そんなふうに、長年の片頭痛治療に行き詰まりを感じている方はいらっしゃいませんか?
実はここ数年で、片頭痛の治療は劇的な進化を遂げています。 今回は、これまでの治療とは全く異なる仕組みを持つ新しい予防薬、**「CGRP関連製剤」**について詳しくお話しします。
専門的な内容になりますが、できるだけ噛み砕いてお伝えしますね。
🧬 片頭痛の原因物質「CGRP」をブロックする
少し難しい名前ですが、**「CGRP(シージーアールピー)」**という言葉を覚えておいてください。これは「カルシトニン遺伝子関連ペプチド」の略称です。
研究により、片頭痛の発作が起きているとき、脳の中でこの「CGRP」という物質が過剰に増え、血管を広げたり炎症を起こしたりして、あのズキズキする痛みを引き起こしていることがわかってきました[1]。
これまでの飲み薬は、血管や神経の興奮をなんとなく抑えるものでしたが、この新しい注射薬は**「CGRPの働きをピンポイントでブロックする」という、まさに片頭痛の根本的なメカニズム**に直接働きかけるお薬なのです。
💉 日本で使える3つの注射薬
現在、日本国内では以下の3種類の薬剤が承認されています(2025年現在)。 いずれも1ヶ月に1回(または3ヶ月に1回)、皮下に注射をするタイプのお薬です。
- エムガルティ(一般名:ガルカネズマブ)
- アジョビ(一般名:フレマネズマブ)
- アイモビーグ(一般名:エレヌマブ)

「注射」と聞くと怖がられる方もいますが、インスリン注射のように針が非常に細く、ペン型で簡単に打てる工夫がされているものもあり、慣れればご自宅で自己注射も可能です。
ちなみに私も自己注射しました。お勧め投与部位はおなかです。
📊 医学的なエビデンス(効果の根拠)
では、どれくらい効くのでしょうか? 医師として、しっかりとデータ(エビデンス)をお示しします。
1. ガイドラインでの高い評価 「日本頭痛学会 頭痛の診療ガイドライン2021」において、これらの薬剤は**「推奨グレードA(行うよう強く勧められる)」**と最高ランクの評価を得ています。これは、科学的に有効性が強く証明されていることを意味します[2]。
2. 頭痛日数の減少 海外および国内の臨床試験において、これらの薬を使用することで、多くの患者さんで月間の片頭痛日数が大幅に減少したことが報告されています。 例えば、エムガルティの国内臨床試験では、投与6ヶ月後に片頭痛の日数が平均して約半減したというデータがあります[3]。
3. 飲み薬が効かなかった人にも有効 特に重要なのが、これまで「従来の予防薬が効かなかった方」や「副作用で飲み続けられなかった方」に対しても、高い効果が認められている点です[4]。
⚠️ 副作用とコストについて
良いことばかりのようですが、注意点もしっかりお伝えします。
- 副作用: 従来の飲み薬(眠気やふらつきなど)に比べると全身の副作用はないに等しいのですが、「注射部位反応」(注射した場所が赤くなったり、痒くなったりする)が起こることがあります。多くは数日で治まります。
- 費用: 新しいバイオ医薬品であるため、従来の飲み薬に比べると薬価が高額です(3割負担でも1本あたり13000円〜など ※薬剤によります)。
ただ、付加給付や高額療養費制度などが使える場合もありますし、確定申告で医療費控除が効きます。
「仕事のパフォーマンスが上がるなら安い」と感じられる患者さんも多く、価値観はそれぞれです。
👩⚕️ 最後に:あきらめる前に相談を
このCGRP関連製剤の登場は、私たち頭痛治療に携わる医師にとっても「革命」と言える出来事でした。
ついでにお話しを付け加えると私自身の片頭痛も非常にうまーくコントロールしてくれている薬剤です。毎月の片頭痛が20日以上あったのに、今はほぼゼロ(二日酔い除く)
人生で頭痛から解放されるなんて思いもしませんでした。
「私の頭痛はどうせ治らない」 そう思い込んでしまう前に、ぜひ一度、「新しい注射の治療について聞きたい」とご相談ください。私の体験談を聞きたいでもいいですね。
あなたの頭痛ライフを変えるきっかけになるかもしれません。
【参考文献・エビデンス】
- [1] Edvinsson L, et al. CGRP as the target of new migraine therapies – successful translation from bench to clinic. Nat Rev Neurol. 2018.
- [2] 日本頭痛学会・監修. 頭痛の診療ガイドライン2021. 医学書院. 第2章 片頭痛の予防療法.
- [3] Sakai F, et al. Phase 2 randomized placebo-controlled study of galcanezumab in Japanese patients with episodic migraine. Cephalalgia. 2020.
- [4] Goadsby PJ, et al. Efficacy and safety of erenumab in episodic migraine patients with 2-4 prior preventive treatment failures: results from the phase 3b LIBERTY study. Lancet Neurol. 2018.




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