本日、2026年4月17日に新しい片頭痛予防薬であるアトゲパント(商品名:アクイプタ)が発売されました!さらに、少し前にはリメゲパント(商品名:ナルティーク)というお薬も登場しており、現在日本の片頭痛治療には「ゲパント」と呼ばれる新しい飲み薬が2つも揃うという、劇的な進化のタイミングを迎えています。

今回は、この新しく登場した2つの「ゲパント」の特徴と、これまで主流だった「注射薬」との違いについて、医学的な根拠(エビデンス)を交えながら詳しく解説していきますね。

1. 予防治療の主流「注射薬」と、新しい「飲み薬(ゲパント)」の違い

片頭痛の発作には、脳の三叉神経などから放出される**CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)**という物質が深く関わっています。この物質の働きをブロックすることで片頭痛を予防するのですが、これには大きく分けて「注射薬」と「飲み薬」の2つのアプローチがあります。

従来の主役:抗CGRP抗体製剤(注射薬)

これまで、強力な片頭痛予防といえば「注射薬」でした。これらは「抗体」と呼ばれる非常に大きな分子(高分子)で作られています。

  • 特徴: 分子が大きいため、飲み薬にすると胃や腸で分解されてしまい、効果が出ません。そのため皮下注射などで直接体内に入れる必要があります。
  • メリットとデメリット: 体内に長く留まるため、月に1回(あるいは3ヶ月に1回)の投与で済むのが大きなメリットです。一方で、「注射の痛みが苦手」「通院のハードルが高い」「一度注射すると体から抜けるまでに時間がかかる」といった側面もありました。

新しい選択肢:ゲパント(飲み薬)

今回登場した2つのゲパントは、「低分子化合物」と呼ばれる非常に小さな構造で作られています。

  • 特徴: 分子が小さいため、胃酸で分解されずに**「飲み薬」として腸からしっかり吸収され、脳の血管や神経に届きます。**
  • メリットとデメリット: 毎日、あるいは1日おきに飲む手間はありますが、「注射が不要で手軽に始められる」「もし体に合わなくても、飲むのをやめれば比較的早く体から抜ける」という、患者さんにとって非常に扱いやすいメリットがあります。

2. 登場した2つの「ゲパント」それぞれの特徴

現在、日本国内で使用できるゲパントは以下の2種類です。どちらも片頭痛を抑える素晴らしい効果を持っていますが、それぞれにユニークな特徴があります。

① リメゲパント(商品名:ナルティーク)

「急性期治療(痛みを鎮める)」と「予防治療(痛みを起こりにくくする)」の、2つの役割を1つのお薬で兼ね備えているのが最大の特徴です。

  • 予防治療としての使い方: 日本の臨床現場では、予防目的で使用する場合、**「1日おき(隔日)」**に服用するというスケジュールで治療を行います。
  • 特徴: 痛みが起きた時に頓服として飲むことも、1日おきに飲んで予防することもできるため、患者さんの痛みの頻度やライフスタイルに合わせた柔軟な治療が可能です。

② アトゲパント(商品名:アクイプタ)

本日(2026年4月17日)発売されたばかりのお薬で、こちらは**「片頭痛発作の発症抑制(予防)」に特化**しています。

  • 予防治療としての使い方: 患者さんの状態に合わせて10mg、30mg、60mgのいずれかを**「1日1回」**毎日服用します。
  • 特徴: 毎日決まったタイミングで飲むため習慣化しやすく、血中のお薬の濃度を常に一定に保ちながら、強力に片頭痛の発作を未然に防ぎます。

3. 臨床試験のエビデンス(医学的根拠)

これらの新しい飲み薬がどれほど頼もしい存在か、信頼できる国際的な臨床試験のデータをご紹介します。

リメゲパントのエビデンス

【出典】

  • 論文名: Oral rimegepant for preventive treatment of migraine: a phase 2/3, randomised, double-blind, placebo-controlled trial
  • 著者: Croop R, et al.
  • 発表年: 2021年
  • 掲載誌: The Lancet
  • リンク/DOI:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33341155/

この試験では、リメゲパントを1日おき(隔日)で服用した患者さんにおいて、プラセボ(有効成分の入っていない偽薬)を服用したグループと比較し、月間の片頭痛日数が有意に減少することがしっかりと確認されました。

アトゲパントのエビデンス(PROGRESS試験)

【出典】

  • 論文名: Atogepant for the preventive treatment of chronic migraine (PROGRESS): a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 3 trial
  • 著者: Pozo-Rosich P, et al.
  • 発表年: 2023年
  • 掲載誌: The Lancet
  • リンク/DOI:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37516125/

月に15日以上頭痛がある「慢性片頭痛」の患者さんにおいて、アトゲパントを1日1回、12週間服用した結果、月間の片頭痛日数がベースラインから約7日ほど減少し、高い予防効果が統計学的にも証明されています。

4. 副作用と安全性について

注射薬と同様に、ゲパントも従来の古い予防薬(抗うつ薬や降圧薬の転用など)と比べて副作用が少なく、体への負担が少ないのが特徴です。

  • 主な副作用: 最も多くみられるのは、便秘や吐き気(悪心)などのお腹の症状です。とくに飲み始めに胃腸がびっくりして症状が出ることがありますが、多くは軽度です。また、アトゲパントでは一部の方に体重減少がみられることがあります。
  • 肝機能について: 過去に開発されていた古い世代のゲパントでは肝機能障害が懸念されていましたが、リメゲパントやアトゲパントといった新しい世代では、そのリスクは大幅に改善されています。とはいえ、安全第一のため、当院でも定期的な採血等でしっかり確認を行いながら治療を進めていきます。

5. おわりに

「片頭痛を予防したいけれど、注射には抵抗があった」という方にとって、リメゲパントとアトゲパントという2つの飲み薬が揃ったことは、治療の選択肢を広げる素晴らしい希望です。

「1日おきに飲む」「毎日飲む」など、ご自身の生活スタイルに一番合った方法を、私たち医師と一緒に見つけていきましょう。

沖縄の長い夏を、頭痛の不安なく快適に乗り切るために。 「頭痛は体質だから」と諦めず、ぜひお気軽に当院や、お近くの頭痛外来でご相談くださいね。

それでは、また次回のブログでお会いしましょう。

注意!!現在(2026年4月17日)は処方制限があります。
1回の受診で14日分の処方となります。

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